大学のハラスメントを看過しない会 2022年度事業報告

(2022年4月~2023年3月)

  

  

1)民事訴訟の支援

 原告A /深沢レナの早稲田大学におけるセクシュアル・ハラスメント被害をめぐる民事訴訟を支援するため、支援者は陳述書の作成会に参加し、法廷における尋問(証人尋問、本人尋問、反対尋問)に向けての準備に協力し、裁判所に提出するための書面作成や、ホームページでの情報公開に先立つ書類整理と作成、確認作業を手伝った。

 また、3月下旬に予定されていた判決当日にむけて、記者会見の準備等を手伝った。

【2022年】

4月12日 第11回弁論準備

6月9日 第12回弁論準備 陳述書を提出

9月15日 尋問

11月29日 結審

【2023年】

3月23日に判決が予定されていたが翌期4月6日に延期

   

  

2)HP、note、twitterでの情報発信、情報収集

・前々年度、前年度から引き続き、ハラスメント問題について、知見を広げながらより深く考えていくために、専門家や関係者へのインタビューを実施し、その内容を無料で公開した。今年度はとりわけ、運動内でおこるハラスメントや各運動の分断に焦点を当て、文筆家・フェミニストである栗田隆子氏と対話を行った。

・被害者や団体が孤立してしまいがちな状況を改善するため、横のつながりをつくっていくことを目指して、Be with Ayano Anzaiほか、外部の被害者・団体への取材や裁判傍聴を行い、公開可能なものはその内容を無料で公開した。

・他の性暴力・ハラスメントでも頻繁に用いられる「エントラップメント(囲い込み)」や、指導の体で行われる人格否定的なアカデミック・ハラスメント、被害後にくりかえされる教員・相談員・大学からの二次加害など、今後の被害防止のための参考となるよう、深沢が自身の事件の発生から現在までの経過を具体的に振り返り、多数の学術的文献と照らし合わせながら体系的に記した「陳述書」を全文公開した。また、支援メンバーは、この陳述書の作成協力を継続的に行い、HP公開にあたっては個人情報を黒塗りにするなど、編集作業を行った。

・「陳述書」で書かれた被害や、早稲田大学による調査結果およびハラスメントに対する大学の認識を、さまざまな角度から分析するために、「広島大学 北仲千里氏による意見書」「解説 内田樹さん〈師弟関係とハラスメント〉」「解説 しだゆいさん〈大学のハラスメント認識における『リスク』と『コンプライアンス』の問題〉」といった意見書・解説の執筆を依頼し、無料で公開した。

・性暴力・ハラスメント事件は、訴訟となったときに、被害者側の情報収集が困難であるため、今後の参考になるように、計155枚に及ぶ「尋問調書」(証人調書、原告の本人調書、被告の本人調書)を公開した。また公開にあたり、経緯説明に関係のない個人情報にはマスキング処理を行った。

・2023/1/26に、映画業界での性暴力を告発した千葉美裸さんが自死されたというニュースが報道された。二次加害の深刻さ・被害者の孤立化について深沢が改めて危機感を抱き、Twitter上で被害者の自助会・グループカウンセリングの必要性についてアンケートをとったところ、「絶対必要。すぐ作って欲しい」という声が40%を超える(https://twitter.com/dontoverlookha1/status/1618809806940434432)結果となった。

 被害者(またその支援者)同士で情報交換ができる「性暴力・ハラスメント被害者ネットワーク」を立ち上げるため、インターネット上で被害を公にしている被害者・支援者の方々に呼びかけを速やかに行い、設立した。

・被害者や一部の支援者だけがさまざまな負担を背負わされている現状を世間に訴えるために、声明文「応援してくれているみなさんへ」を公開した。加えて、公平中立であると思われがちな裁判で、立場の弱い(元)学生が情報収集することがいかに困難かであることを周知させる必要があると判断し、「現代文芸コース教員2名とのメール」を公開した。

【2022年】

6月5日  原告A /深沢レナ 「被害者」とはいったい何なのか

     ・・・これまで使用してきた「原告A」の呼称をやめ、氏名を公表

6月13日 「 陳述書(目次、第1~4)」公開

      「広島大学 北仲千里氏による意見書」 公開

6月29日 「他団体紹介② Be with Ayano Anzai」 公開

9月11日 「解説 内田樹さん「師弟関係とハラスメント」」公開

9月21日  「陳述書(第5~8)」 一週間限定公開

→12月13日 「しだゆいさん解説」公開と同時に、第5~7 再度公開

→1月29日 「応援してくれているみなさんへ」公開と同時に、第8 再度公開

12月13日 「 解説 しだゆいさん「大学のハラスメント認識における『リスク』と『コンプライアンス』の問題」公開

12月27日 「 尋問調書(1・2・3)」公開

【2023年】

1月29日 「 応援してくれているみなさんへ」公開

1月31日 「 現代文芸コース教員2名とのメール」公開

2月8日  栗田隆子さんインタビュー公開

2月20日 「あるつどいでの二次加害の記録」公開

  

   

3)支援金を募る

・より広く支援金を募るため、オンラインからクレジット支払いができる「Square」を支援ページに設置した。

・2021年5月に開設していたゆうちょ口座への寄付金が、22年4月末以降 Square を用いたクレジット決済が可能となったこともあり、今期になって大きく増えた。

・合計で、延べ59名の支援者の方々から、手数料等を差し引くと803112円の寄付をいただいた。

・これにより、前年度まで −523662円の累積赤字が生じていた会の事業決算を、かろうじてわずかに黒字化することができた。また、深沢本人が継続的に自己負担してきた費用の立て替え分を一部解消できた。

・年度中に支出した裁判関連費用は20000円、取材・運営費は31853円、医療関連費は128540円、交通費は47944円であった。

【2022年】

4月27日 Squareへの登録。設置

  

  

4)取材対応

ハラスメントに対する問題意識を社会に広めていくことを目指し、メディアや雑誌からの取材、原稿執筆に応じた。

【2022年】

5月25日 『生活の批評誌』no.5 「教室のうしろの席から」(深沢レナ寄稿)

6月6日 NHK取材協力

7月8日  弁護士ドットコムニュース 「「大学のハラスメントを看過しない」 繰り返される指導装ったセクハラや暴言…被害受けた元大学院生が会を設立」

12月18日 読売新聞取材

【2023年】

1月23日 『対抗言論 3号』(法政大学出版局)に「インタビュー 言葉を取り戻すために──加害と被害、ハラスメント裁判、そして連帯をめぐって 【深沢レナ・安西彩乃・関優花 聞き手 川口好美】」掲載