大学のハラスメントを看過しない会 2023年度事業報告

(2023年4月~2024年3月 下半期を中心に)

  

  

1)民事訴訟の支援および啓発活動

 原告・深沢レナさんの早稲田大学大学院におけるセクハラ被害をめぐる民事訴訟は、東京地裁判決が23年4月6日にあり、支援者は記者会見の準備や、さまざまな事後対応に努めました。

第一審判決は、勝訴とはいえ納得のゆく中身にはほど遠かったため、高裁への控訴を決め、そのための書面作りや、弁護士との相談を続けました。

24年の2月22日には東京高裁での第二審(控訴審)判決がくだり、一審よりも原告の主張がより多く認められる結果となったことを受け、裁判は終結しています。

 同時に、セクハラやアカハラなどのハラスメント被害の問題と、ヴィーガニズムや動物倫理・動物福祉の問題をテーマとして、「看過channel」での動画配信をはじめました。

 24年5月末の時点で、オンラインの「動物問題連続座談会」は全7回まで実施し、動画は第5回までがYouTube上で視聴できるようになっています。

https://www.youtube.com/@dontoverlook_harassment

同時に、座談の内容は文字起こしし、さまざまな情報を補って、看過しない会のnote上で読める記事にしています。

https://note.com/dontoverlook_ha

座談会プロジェクトの活動資金は、海外に拠点を置く3つの民間チャリティ財団に申請し、支援を得ることができました。

【2023年】

4月6日 第一審、地裁判決。記者会見

4月20日 控訴状を提出

6月9日 控訴理由書を提出

7月17日 YouTubeにて「看過channel」をはじめる

10月18日 控訴理由補充書を提出       

10月21日 動物問題連続座談会をはじめる

10月26日 結審

【2024年】

2月22日 第二審、高裁判決。記者会見

3月28日 「大学ハラスメント対策検証プロジェクト」文科省記者会見

  

  

2)下半期の事業報告

「上半期の事業報告」は、2023年12月18日付の以下の記事に、すでに詳細をまとめています。

http://dontoverlookharassment.tokyo/2023/12/18/2023report/

以下は、上記と重複しない情報のみを記します。

◉控訴審判決文の情報公開と、記者会見動画の公開

判決後、ただちに裁判所の判断を分析し、わたしたちの所見を加えてネット上に公開しました。会見では、内藤忍氏(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)の協力を得ました。

以下からその動画を見ることができます。

http://dontoverlookharassment.tokyo/2024/03/01/pressconference2/

◉「大学ハラスメント対策検証プロジェクト」立ち上げへの参加

2024年春、かねてからキャンパス・ハラスメントの問題について連絡を取り合っていた大学の研究者や関係者とともに、「大学ハラスメント対策検証プロジェクト」(略称:CAPA: Campus Anti-harassment Policy Assessment)をスタートさせることになりました。

「日本版タイトルナインを求める研究者の会」「Equal on Campus Japan」「大学のハラスメントを看過しない会」の3団体が中心となり、今後活動を進める予定です。

3月28日には、文部科学省内の文部科学記者クラブにて、発足のアナウンスのための記者会見を行いました。

活動の軸は、

  • 大学における被害や対策の実態調査(被害者の聞き取りを中心に)
  • 米国の連邦法(タイトルナイン)のような法規制の実現
  • 被害者学生の救済システムの構築

をめざしています。

  

  

◉「動物問題連続座談会」の継続

レギュラーゲストに栗田隆子さんと生田武志さんを迎え、毎回、さまざまな団体や個人からお話をうかがい、学ぶプロジェクトを続けています。

「第1回 動物から考える社会運動―なぜわたしたちはハラスメント運動/野宿者支援をしながら動物の運動をするのか?」(23年10月19日〜配信)

「第2回 動物から考える日本の暴力構造 ゲスト:アニマルライツセンター」(12月8日〜配信)

「第3回 動物園を考える ゲスト:佐藤栄記さん」(24年1月26日〜配信。佐藤監督の映画『かわいそうな象を知っていますか』を上映。参加者を募集して実施)

「第4回 世界の動物運動を知る ゲスト:Animal Alliance Asia」(3月15日〜配信)

「第5回 ヴィーガン・ベジタリアンの人権 ゲスト:ASー動物の倫理と哲学のメディア」(4月7日〜配信。事前に「ヴィーガンの人権に関するアンケート調査」を実施、102名の方々からの回答あり。参加者を募集して実施)

「第6回 はじめて学ぶ「動物実験」 ゲスト:JAVA(動物実験の廃止を求める会)」(6月末〜配信予定)

「第7回 動物運動小史 ゲスト:井上太一さん、川口好美さん」(近日配信予定。参加者を募集して実施)

以下つづく……

(アニマルライツセンターさん主催の座談会にも参加しました。

「人権から動物の権利を考える」2024年3月14日

https://arcj.org/issues/animal-rights/ar-channel-50/ )

  

  

3)支援金と助成金、会計報告

・当年度にゆうちょ口座への振り込みやオンラインで支援してくださった方々の数は、延べ40名にのぼり、手数料等を差し引くと、586244円の支援となりました。

 なかには、たいへん高額の支援を寄せてくださった方もおられました。個別にお礼を申し上げられず恐縮ですが、支援者のみなさま全員のあたたかいお気持ちに、心より感謝いたします。

・本会の動物倫理問題の活動に対して、米国のチャリティ基金(Pollination Project、Thrive Philanthropy)およびLush Japanという3つの団体から、総計でおよそ100万円の財政的な支援を得ることができました。この助成がなければ、連続座談会は継続が困難でした。ご厚意に深く感謝いたします。

Pollination Project:https://thepollinationproject.org/

Thrive Philanthropy:https://www.thrivephilanthropy.org/

Lush Japan:https://weare.lush.com/jp/

・年度中に支出した活動経費のうち、裁判関連費用は407493円、機材や図書費などを含む取材・運営費は325282円、座談会や記者会見などの作業費・謝礼金は259461円、医療関連費は133290円、交通費は37935円でした。

ここまで深沢さん本人が自己負担してきた諸費用の立て替え分を、今年度にいたってようやく解消することができました。

なお、裁判終結までは、医療費の支出にも支援金を使わせていただき、心身両面で大きな助力となりました。2024年度以降は医療費には使用せず、いただいた寄付金はもっぱら活動費やコンテンツ製作費に使用いたします。

  

  

4)取材対応

第一審・第二審の判決直後には、記者会見を受けて多数の新聞記事が掲載されました。それらは以下から確認することができます。

メディア掲載情報

なお、2023年3月・4月には読売新聞とTBSの記者さんに、また2024年4月には北海道新聞の記者さんに直接取材していただき、朝刊の記事やテレビニュースで報道していただきました。

裁判は一段落しましたが、今後も「大学ハラスメント対策検証プロジェクト」などの活動が続きます。

引きつづき、本会の趣旨に賛同をいただける皆様からのご支援・ご協力を願っています。