大学のハラスメントを看過しない会 2024年度事業報告

(2024年4月~2025年3月)

  

  ※この報告書は、2026年4月に作成しました。

【本年度の最重要成果:早稲田大学ハラスメント裁判の勝訴と終結】

2020年の結成以来、本会の最大の柱であった「早稲田大学セクシュアルハラスメント裁判」は、2024年2月22日の東京高等裁判所判決において、一審を上回る勝訴を勝ち取り、確定・終結いたしました。

判決の意義と前進

控訴審判決では、一審で認められなかった「食事のシェア要求」などのハラスメント行為が新たに違法と認定され、賠償額が増額されました。何より、大学には学生が安全に学ぶ環境を保障する「適切配慮義務」があることが法的に明文化された点は、今後のキャンパス・ハラスメント撲滅に向けた極めて重要な法的遺産となりました。

残された課題と不十分な認定(満足していない点)

一方で、今回の勝訴判決をもってしても、ハラスメントの本質的な問題がすべて解決されたわけではなく、以下のような深刻な不満点が残されています。

  • 「エントラップメント(囲い込み)」構造の等閑視:裁判所は依然として個別の加害行為をバラバラに切り離して評価する手法(細切れの認定)に終始し、社会的地位を利用して段階的に支配を強めていく「構造的な性加害プロセス」の実態に踏み込むことはありませんでした。
  • 入試選考プロセスのブラックボックス化:原告が強く主張した「不透明な入試選考」や「特定の女子学生を狙い撃ちにする『不良枠』」といった入試段階からの異常な囲い込みの実態について、判決は言及を回避し、事実解明を等閑視しました。
  • 「退学」との相当因果関係の否定:ハラスメントが原告を精神的に追い詰め、学習継続を不可能にした事実は明白であるにもかかわらず、裁判所は退学の主因を語学科目の単位不足等の形式的理由に求め、ハラスメントと退学との因果関係を認めませんでした。
  • 身体接触や外見評価の免責:教員が学生の体に触れる行為や「かわいい」といった外見ジャッジについても、依然として「社会通念上許容される範囲」として違法性が否定されるなど、司法のジェンダー感覚の著しい遅れが露呈しました。
  • 低すぎる賠償額と直接謝罪の欠如:増額されたとはいえ、賠償金は授業料1年分にも満たず、人生を狂わされた損害に対してあまりに不十分です。また、大学および加害者からは、原告に対する直接の謝罪の言葉は今も一言もありません。

訴訟支援から制度改善へ

裁判の終結を受け、本会は個別の訴訟支援という役割を全うしました。しかし、上述の通り司法の限界も浮き彫りとなったことから、2024年度からは、得られた判決や記録を「公共財」として社会に還元し、日本の大学全体の制度改善(法整備の促進)を求める活動(CAPAプロジェクト等)へと大きく舵を切りました。裁判で解明しきれなかった問いは、今後の社会運動における重要な指針として引き継いでまいります。

1)ハラスメント対策の制度改善に向けた活動(CAPAプロジェクト)

2024年2月の早稲田大学ハラスメント裁判・控訴審判決による勝訴と裁判終結を受け、本会は個別の訴訟支援から、大学ハラスメントを根絶するための制度的改善を求める活動へと舵を切りました。

  • 「大学ハラスメント対策検証プロジェクト(CAPA)」の推進: 2024年3月28日の文部科学省での記者会見を経て、研究者や他団体と協力し、日本の大学におけるハラスメント対策の実態調査を開始しました。被害学生の救済システム構築や、米国の「タイトルナイン」のような実効性のある法規制の実現を目指し、沈黙させられた当事者の声を政策に繋げるための活動をはじめました。

※ CAPAの停滞と現状: 2024年に「日本版タイトルナインを求める研究者の会」などと協力して立ち上げられたCAPAですが 、プロジェクトとしての継続的な活動は行われていません。

新プロジェクト「点を線にするために」について: CAPAが目指していた「被害者の声を聞く実態調査」という核心部分は、2026年現在、深沢レナと睡蓮みどり氏(俳優・文筆家)によるポッドキャスト〈もやのみ〉主催のプロジェクト「点を線にするために」(2026年1月〜4月始動)に引き継がれる形で、実質的な活動が始まっています。

〈もやのみ〉noteリンク:https://note.com/moyanomi_1111

   

2)動物倫理・ヴィーガニズムを通じた交差的な社会運動の展開

性暴力の根底にある「他者の暴力的支配」と、動物に対する「構造的暴力」を繋げて考える「学びと実践」を、本年度の活動の柱としました。

  • 「動物問題連続座談会」の継続と深化: YouTube「看過channel」およびnoteでの発信を通じて、専門家や活動家を招いた対話を継続しました。
    • 第5回「ヴィーガン・ベジタリアンの人権」(4月):事前のアンケート調査(102名回答)をもとに、日本におけるヴィーガン排除の現状を議論しました。
    • 第6回「はじめて学ぶ『動物実験』」(7月):JAVA(動物実験の廃止を求める会)をゲストに迎え、見えなくされている動物たちの現状を学びました。
    • 第7回「動物運動小史」(8月):動物保護運動の歴史を振り返りました。
    • 学習会「動物問題と部落差別」(10月):差別の交差性(インターセクショナリティ)の観点から、歴史的な背景を含めた対話を行いました。
  • 「野宿者にヴィーガン弁当を配ろう!」プロジェクト: 2024年6月から7月にかけて、大阪・釜ヶ崎(西成)にて、社会的弱者への支援と動物倫理を繋げる実践として、ヴィーガン弁当の配布とレポート公開を行いました。
  • 映画字幕翻訳の共同実施:ドキュメンタリー映画『Christspiracy-キリストの秘密』の字幕翻訳を、ASー動物の倫理と哲学のメディア代表の黒瀬陽氏と共同で行いました

3)情報発信とコンテンツ制作、多層的な対話の場づくり

  • noteの運営: 座談会の書き起こし、海外(台湾、北米等)のヴィーガン調査レポート、社会運動における排除の問題提起など、多岐にわたる記事を継続的に公開しました。
  • 裁判記録の公共財化: 裁判は終結しましたが、そこで認められた「適切配慮義務」の概念や、提出された専門家の意見書などを、今後の被害者支援のノウハウとして引き続き公開・共有しています。
  • 読書会の開催とアーカイブ公開:より多層的なオーディエンスを想定し、ヴィーガニズムやフェミニズムなどをメインテーマとした、小説やマンガの読みを行う読書会(ハン・ガン『菜食主義者』、『ONE PIECE』等)を開催し、アーカイブとして公開しました。

4)支援金と助成金、会計報告

  • 支援の状況: 本年度も多くの方から継続的な寄付をいただきました。また、動物倫理関連の活動については、海外チャリティ基金(Pollination Project、Thrive Philanthropy)およびLush Japanからの助成金を引き続き活用しました。
  • 会計方針の変更: 裁判終結に伴い、前年度まで一部支出していた深沢の医療費への充当を2023年度をもって終了しました。2024年度以降、いただいた寄付金はもっぱらプラットフォーム維持費、活動費、交通費、および座談会・動画等のコンテンツ製作費(謝礼金・外注費)に使用する体制へと移行しました。
  • 立替金の精算: 代表が長期にわたって自己負担してきた諸費用の立て替え分について、寄付金を原資として順次精算を進め、組織としての健全な財務基盤の構築に努めました。

5)取材対応・外部登壇

  • メディア掲載: CAPAプロジェクトの立ち上げや、裁判の意義に関する振り返り記事が複数の新聞・ウェブメディアに掲載されました。
  • 外部イベント: アニマルライツセンター主催の座談会「人権から動物の権利を考える」への参加など、他団体との連帯を強めました。

2024年度(2024年4月〜2025年3月)に公開・作成された主なコンテンツおよび記事一覧は以下の通りです。この時期の活動は、裁判終結を受けたハラスメント対策の制度改善(CAPA)と、動物倫理・ヴィーガニズムに関する発信に大きく分かれています。

1. 公式ウェブサイト掲載記事


2. note掲載記事(Across Beings Collective)

【座談会・インタビュー・社会問題】

【ヴィーガングルメ・ライフスタイル・実地活動】