1 我慢しない・自分を責めない
・まずは、自分がその行為を受けて不快に感じているんだということを自分自身で受け入れましょう。「これくらい普通のことなんじゃないか」「他の人はみんな平気そうだし、嫌だと思う自分の方がどうかしてるのかもしれない」「考えすぎ、過敏なのかも」などと、自分の感覚をごまかしたり否定したりする必要はありません。感じることは個人の自由です。
・また、ハラスメント被害を受けると、「自分にも非があったのではないか」「自分に隙があったせいではないか」などと、原因を自分の中に探そうとしてしまったり、自分の尊厳や価値が踏みにじられることで無力感にさいなまれることが多々あります。自責はいったんストップし、自分で自分を追い詰めないようにしてください。
2 安全を確保する
・加害者から離れ、物理的・精神的に距離をおき、ご自身の安全を確保してください。「とりあえず様子を見る」のは危険です。
・心身に不調がある場合は、気兼ねなく休んで病院にいきましょう。トラウマケア・セルフケアの本を探して読んでみることもお勧めです。
・相手に「NO」を伝えることを推奨する本などは多く、もちろん可能ならばそれは大事なことですが、きっぱり拒絶することでかえって状況が悪化することが予想される場合は、無理する必要はありません。「NO」を言えない自分を責めることはありません。とはいえ、何とか受け流そうと笑ったり、冗談めかした受け答えをするのは止めて、ただ真顔で黙るなど、自分にもできることを探ってみるといいかもしれません。
・加害者や大学側と面談などで接触することになった場合、なるべく家族・友人・代理人といった第三者に同伴してもらうことをお勧めします。相手方とご自身との二人きりになるような状況は避けましょう。また、録音やメモなどで必ず記録をつけておきましょう。
3 周囲の信頼できる人に相談する・協力者を見極める
・一人で抱え込むことを避け、身近な信頼できる人に相談しましょう。具体的な解決策が得られなくても、人に話すだけでも気が楽になることもあります。ただし、加害者と直接繋がりのある人や、大学に所属している人からは、立場上、被害者に寄り添った意見がもらえないことがあるという可能性を念頭に置いておいてください。まずは利害関係のない友人や家族などから話していく方が無難かもしれません。
・他にも似たような被害を受けている人がいれば、コンタクトをとってみたり、情報交換してみることも手です。
・こうして第三者に話をしていくなかで、慎重に相手の反応を吟味し、今後も協力してくれそうな人を見極めていきましょう。
・人に話すことができなくても、ネットや本でハラスメントについて情報収集し、「同じような被害で苦しんでいるのは自分だけではないのだ」と知るだけでも有益です。
4 記録する・証拠を集めておく
のちのち水掛け論になるのを防ぐため、早い段階から証拠を残しておくことが重要です。
・録音・メモ・・・ICレコーダーやスマホで録音しておくことをお勧めします。
・日記に記録しておく・・・継続して書かれたものであれば、証拠価値が高まります。また、自分がどのように不快感を抱いているか、どのような恐怖を抱いているかなど、自分の内面と向き合うためにも有効です。
・メール・LINEなどを送る・・・信頼できる人がいれば、被害を受けて苦しんでいるということを記録に残る形で伝えておくとよいでしょう。また、加害者からの攻撃がメール・SNS等でもなされていた場合、不快かもしれませんが削除せずに保存しておきましょう。
・SNSに投稿する・・・被害の詳細を書かなくてもいいし、ぼやきや愚痴程度の投稿でも構いません。鍵付きアカウントやブログ等でも大丈夫です。とにかく記録を残しておきましょう。(※ただし、不特定多数に対し具体的事実を示して相手の社会的評価を下げる表現行為をした場合、名誉毀損行為とされることもあるので、一般公開する際は注意が必要です)
・病院・薬の記録・・・体調不良によりかかった病院・薬局で発行された領収書や処方箋などは保管しておきましょう。
5 大学の相談窓口等に相談する
・学内にハラスメントの相談窓口等があれば、相談しにいくことも可能です。学校によって異なりますが、匿名で相談したり、電話で相談できるところもあるようです。自分の在籍している大学ではどういった相談が可能か調べてみましょう。また、相談窓口がどういった構成員からなりたっているか、相談員の名前が明記されているか、家族や友人・代理人の同伴は可能かなど、被害者に寄り添った対応をしてくれるかどうかも確認しておきましょう。
・ただし、大学側の窓口はあくまで大学という組織の一部であるため、そこですべて解決してもらえることは期待しないほうがいいかもしれません。真摯に対応してくれない可能性も踏まえ、相談の際は必ず記録を残しておきましょう。
・学内の相談窓口に相談したという実績を残しておくだけでも、あとで役立つこともあります。また自分が受けた被害の内容を他者に説明し、言語化するということは、その後、外部に相談しに行く際の練習にもなります。
・正規の窓口ではなく、教員など学内関係者が内々で対応してくれるようであれば、そちらで進めていくこともできますが、学内関係者に相談したことによってかえって被害が悪化するケースが生まれています。念のため、正規の窓口や外部の相談窓口にも相談しておくなど、複数の相手に頼っておくといいかもしれません。
6 外部の相談窓口を調べる・説明資料を作る
・大学の窓口で十分な対応が受けられない場合をふまえ、はやめに外部の相談窓口に相談しておくことをお勧めします。民間の団体・弁護士事務所等を調べ、自分のケースに合うところを見つけてください。
・経営者側の弁護士にあたると、被害者に寄り添った意見をもらえないこともあります。何の問題に特化した弁護士なのかあらかじめ調べておくことが重要です。また、複数の弁護士の意見を聞いて参考にしてみてもよいでしょう。
・弁護士の場合、相談時間に応じて料金が設定されていることが一般的です。時間内でわかりやすく説明できるように、証拠を整理したり、被害の概略についてまとめたり、組織図・人物相関図を作成したりなど、あらかじめ資料を作っておきましょう。
7 ハラスメントについて正しい知識を身につける
・受けた行為がハラスメントに該当するか自信がもてないと、訴えていいものか二の足を踏んでしまったり、加害者側からの反論や周囲の人たちからの中傷をうけてひるんでしまうことがあります。受けた行為がハラスメントであり、自分にはそれを訴える正当な権利があるのだということを、きちんと根拠をもって提示することができれば、ハラスメント被害によって傷つけられた自信を回復することにも繋がります。
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8 自分はどうしたいのか考える
・無理にアクションをおこす必要はありませんが、被害者にできる選択肢はたくさんあります。自分がどうしたいのか考え、やはりこのままにしておきたくないと思えば、行動に移していきましょう。
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